海外論文ピックアップ NEJM誌より
2013. 4. 1
NEJM誌から
椎間板ヘルニアのMRI所見は転帰と相関せず
治療1年後のMRI所見と坐骨神経痛の有無は無関係
大西淳子
椎間板ヘルニア治療1年後のMRI所見は、坐骨神経痛の転帰と相関しないことが、オランダLeiden大学医療センターのAbdelilah el Barzouhi氏らによる研究で示された。詳細は、NEJM誌2013年3月14日号に報告された。
坐骨神経痛の主な原因は椎間板ヘルニアだ。多くの患者では下肢の痛みは8週間以内に消失するが、保存的治療を行っても症状が持続する患者も存在し、そのような患者にはヘルニアに対する手術が行われている。しかし、ヘルニアの手術を受けても、坐骨神経痛の症状が消失しない、または再発する患者が15~20%程度存在する。
MRI検査は、椎間板ヘルニアが認められ、坐骨神経痛の症状が持続する患者のフォローアップとしてしばしば用いられる。しかし、MRI所見と臨床転帰の関係については議論があった。
著者らは先に、坐骨神経痛が6~12週間持続し、MRI画像で神経痛の原因として椎間板ヘルニアが確認された患者を、ランダムに外科手術または長期の保存的治療(必要なら手術を実施)に割り付け、その後の転帰を比較する多施設ランダム化比較試験(RCT)を実施した。その結果、保存的治療に比べて外科手術を受けた患者の方が症状軽減が早いものの、1年時の転帰には差がなかった。
今回、この試験に登録した患者283人を対象に分析を行った。これらの患者はベースラインと1年後にMRI検査を受けていた。4ポイント尺度を用いて、1年時のMRI画像上の椎間板ヘルニアを評価した。スコア1はヘルニアが確実に存在する、スコア2はほぼ確実に存在する、スコア3は存在が示唆される、スコア4は確実に存在しないことを示す。
臨床転帰は、患者自身が認識する全般的な回復度を7ポイントのリッカート尺度を用いて評価した。1年時に、「症状が完全に消失」または「ほぼ完全に消失」したと報告した患者を「転帰良好」と判定した。
1年時にMRI検査を受けていたのは267人で、うち131人が外科手術群、136人が保存的治療群に割り付けられていた。また、保存的治療群のうち54人が1年以内に手術を受けていた。
「臨床転帰が良好か不良か」と、「MRIで認められる椎間板ヘルニア」(4ポイント尺度でスコア1~3)の関係を、ROC曲線下面積を用いて評価した。ROC曲線下面積では、1が予測能が高いことを、0.5以下は予測能が低いことを意味する。
1年時に転帰良好と判断されたのは、84%の患者だった。
スコア1~3のヘルニアは、転帰が良好だった患者の35%、転帰が不良だった患者の33%に認められた。差は-2.7ポイント(95%信頼区間-18.8から12.6、P=0.70)で、有意差は認めなかった。
一方、スコアが1~3のヘルニアが認められた患者のうち、転帰良好は85%、スコアが4でヘルニアが認められなかった患者では83%だった(P=0.70)。
ROC曲線下面積は0.48(95%信頼区間0.39-0.58)で、MRIによるスコア1~3の椎間板ヘルニアの存在は、臨床転帰と相関していなかった。
割り付け治療で調整して、スコア1~3のヘルニア患者について、スコア4のヘルニアのない患者と比較した1年後の転帰良好のオッズ比を求めたところ、0.82(0.40-1.71、P=0.60)となり、有意な差はなかった。
坐骨神経痛を有し椎間板ヘルニアの治療を受けた患者における1年時のMRI画像では、転帰良好と不良を識別することができなかった。「坐骨神経痛の症状が持続または再発した患者における、MRI画像所見の臨床的な意味合いに関して、さらなる検討が必要だ」と、著者らは述べている。
原題は「Magnetic Resonance Imaging in Follow-up Assessment of Sciatica」、概要は、NEJM誌のWebサイトで閲覧できる。
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