看護技術2012-2より
急性期におけるNSTの実践と効果
宮澤 靖 先生 (社団医療法人近森会近森病院)
急性期におけるNSTの考え方
1、急性期におけるNSTの必要性
近年、高齢者の増加や医療が高度化したことにより、医療依存の高い 臓器不全患者が増加している。このような高齢者患者は骨格筋が乏しく、発熱や手術などの侵襲で、急速に栄養状態が悪化するのが特徴である。
食事摂取量が少なく、からだを動かさないと骨格筋は減少し、低栄養によって免疫能が低下する。高齢者は慢性炎症を有しているため感染症を併発して衰弱が進み、死に至る。
2、当院では看護師や管理栄養士が中心となり、多職種による「予防型」の栄養サポート「メインコースディナー方式」(main-course dinner system;MDS)によりNSTを実践している。
以下4つのコンセプト
①腸が使える患者はできるだけ早期に経口・経腸栄養を開始すべき
②栄養サポートの早期介入
③管理栄養士と看護師の情報共有の徹底
④栄養投与とリハビリによる骨格筋の生成
急性期におけるNSTの効果
1、NST介入症例数の増加
2、コストの削減
一般食の減少、特別加算食の増加、経口や経腸栄養が増加し輸
液の使用量の減少がみられた。入院における輸液使用金額(業価)
は2004年6000万円に対し2010年は3000万円へコスト削減となった。
(内訳は中・高エネルギー、細胞外液、維持液、血漿代用液)
3、リハビリと栄養投与による死亡率の減少
2000年~2007年の心臓・大血管手術死亡率(術後1か月以内の死
亡)は、待機手術で0.6%、緊急手術で12.1%と非常に良い成績を残
している。
NSTは医療を変える
20世紀の医療は、医師と看護師中心の医療であった。人手が足りなかったため、絶食状態とし、絨毯爆撃のように抹消輸液で抗菌薬を投与する非生理的な医療であったが、患者が骨格筋の豊かな若年層が中心だったため、なんとか耐えられたといえる。
しかし、超高齢社会を迎えた21世紀では状況が異なる。患者の中心は骨格筋の少ない高齢者である。チーム医療で栄養サポートを行い、できるだけ腸を使って輸液を減らし、特定の病原菌に効く抗菌薬を投与する必要がある。また、低栄養による免疫能の低下や感染症の頻発を防ぐことも大切である。これにより、在院日数を短縮、治療効率を上げて患者を増やすことが可能である。また、労働生産性が高まり人件費率が下がり、物品コストが削減される。これからはこのようなはたらきを強くし、医療の質を向上できるようにすべきである。
社会の高齢化に伴い、医療の基軸は「栄養サポート」と「リハビリテーション」だと考えている。超高齢社会は院内の体制や環境、マンパワー不足などの理由を待ってくれない。
看護技術2012-2より
宮澤 靖 先生 (社団医療法人近森会近森病院)
ブログ筆者としての考え
↓
今回、連載されていた栄養トレーニング「栄トレ」の最終回として掲載された。積極的なNSTとリハビリテーションの介入が慢性炎症をベースとした低栄養や骨格筋の脆弱化した虚弱高齢者の治療に必須であり、医療経済的にも有効であることが示されている。ポイントは予防型のチーム医療の実践ということだといえる。既存の医療は、疾病が発症してからはじめて治療にあたる。しかし、入院中の高齢者は既にある条件を満たすと誤嚥性肺炎や廃用症候群などの合併症が高率に発症することは各々の研究から実証されている。実際の臨床現場でも、絶食後人工栄養など場当たり的な治療が漫然と継続され、合併症や全身状態が重症化し、結果的に在院日数の延長や医療費の増加につながっている。これでは患者自身が望む医療なのか、医療者が結果的に押し付けている医療なのか、いったい誰のために治療しているのか分からない。この事実に対する診療報酬等の制度設計や戦略的医療システムは現代医療においてかなり軽視されている印象が強い。 近い将来、医療資源と医療経済がさらに厳しくなることが確実な医療情勢を考えると、それを先送りにすることは真に必要な医療サービスを提供できなくなる事態に陥ることになる。予防的医療に対する法制化と実践的医療システムの構築、同時に患者や家族が医療に対する意思表示を明確に示す体制づくりが急性期医療にとって急務である。
0 件のコメント:
コメントを投稿