2012年3月22日木曜日

急性期に十分な栄養を提供すれば筋量は低下しないのか?

看護技術2012-3より 

侵襲度の高い手術を乗り越えた患者が、「筋力が低下して歩きにくい」「痩せた」などの経験をすることがよくある。急性期に十分な栄養を投与していれば、この問題は解決するのでしょうか。この問題に答えるためには、急性期の体内でどのような代謝変化が起こるのかを理解することが必要です。
 生体の一部に侵襲が加わると、「侵襲が加わった!」という情報が、ストレスホルモンや情報伝達物質であるサイトカインを介して全身に伝達されます。これらのホルモンやサイトカインは、代謝において次のような影響を与えます。

 ・エネルギー需要が増加する
 ・肝臓に貯蔵されているグリコーゲンが分解され、グルコースとして放出さ
  れる。
 ・タンパク分解が促進し(タンパク異化)グルコースを産生したり、損傷組
  織の修復に使用される。
 ・耐糖能が低下し、血糖値が上昇する。

これらの反応に共通することは「エネルギーを多く生成し、からだの修復を行う」はたらきだということです。
エネルギーを作り出す主要な栄養はグルコース(糖質)です。
侵襲時、グルコースは肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの分解などにより供給されます。













しかし、グリコーゲンの貯蔵量は少なく、すぐになくなってしまいます。そこで肝臓でたんぱく質や脂質などを分解(異化作用)し、再合成することにより糖を作り出します。この過程を糖新生といい、侵襲時には糖新生によってグルコース全体の半分を得ています。
 また、急性期には糖新生以外にも、組織を修復するためなどに筋を分解しアミノ酸を供給します。この状態が長期間継続すると、骨格筋と内臓筋を失い、免疫反応に必要なたんぱく質の合成障害や臓器機能不全を引き起こす恐れがあります。しかし、この急性期のタンパク異化を栄養療法で予防することは難しいと考えられています。ある研究では、ICU入室後24時間内から1週間、完全静脈栄養で必要量の2倍のエネルギーとタンパク質を投与しても、体タンパクの喪失が見られたと報告さてています。なぜ十分すぎる外的栄養素が投与されたにもかかわらず、筋力が低下したのでしょうか
 そもそも、侵襲時には自分の体を分解して傷の修復に利用したり、そのために必要なエネルギーを生成する機構が備わっています。そのため急性期にはエネルギーとして利用される血液中の糖質は十分な量があることがほとんどです。しかし、そこへ過剰な栄養素が投与されると、投与された栄養素を消化・利用するために基礎代謝が増加し、1日に必要なエネルギー量が増大してしまいます。この基礎代謝の増加とともにアドレナリン分泌が増加します。アドレナリンはタンパク異化を促進するため、結果として筋でのタンパク質の分解量が増加することになります
 こうして、異化作用を緩和するために投与された栄養は使われず、逆に異化を促進してしまうという矛盾が起こるのです。また、必要以上のエネルギー投与は、高血糖を助長し合併症の発生率を高める危険性があります。そのため近年では、一日に必要とされるエネルギー量よりも積極的に少ない量を投与するほうがよいという見解もあります。





ブログ筆者の意見 
この内容は、どのくらいの医療者が理解しているのだろうか。栄養状態が悪い→筋力低下→合併症の発生やADLが低下する、といった単純な考えで外的栄養をどんどん入れてしまってはいないだろうか。そのような医療的介入は医原性の合併症を招くなどむしろ逆効果である。そもそも人間には生体を維持する恒常性という生理的な反応が備わっているということを忘れてはならない。急性期リハビリテーションにおいても如何に生理的な反応をサポートするかを考えていくことが重要である。

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