http://www.japanpt.or.jp/14_pta/pdf/pta_13.pdf
PT協会広報誌 PTぁ!より
特集2 半田一登 会長
時代の大きな岐路にある理学療法士の役割
理学療法士はいま、超高齢化を大きな起点として、未来を左右する重要な岐路に立っている。従来の専門技術や知識だけでないことは明らか。理学療法士の「経済」「教育」「社会」の側面から、将来の理学療法士の存在価値を改めて考えてみたい。
20年後、高齢者の増加にともない労働者人口は約1000万人減少する。高齢化によって理学療法士の直接的な需要は増えるが、さらに視野を広げると、労働人数の確保だけではなく、労働の「質」を担保するものとして、労働者の健康を考えるという、理学療法へ新しいニーズが生まれる。たとえば介護職の腰痛の発生率は80%、看護師が60%、理学療法士が50%というデータがあり、腰痛で離職するケースが少なくない。腰痛の発生率の抑制、すなわち労働の負担を軽減することで離職率を抑制することも理学療法士の社会的な仕事。また理学療法の適用範囲を広げることも、経済貢献につながる。現在、理学療法は法律において「けが、病気、障害によって運動機能が低下した人」が対象ですが、それぞれ「予防」を視野に入れることで、すべての患者が対象になる。患者の方の体への負担と入院費用の軽減とともに、労働力確保に寄与することができる。
供給過剰の競争社会において自らの「希少価値」を見出すこと高齢化社会は65歳以上の人口比率がフォーカスされがちだが、約30年後には日本の総人口が1億人を切ることも非常に重要なポイント。現在の理学療法士協会の会員数と人口の比率を30年後に当てはめると、理学療法士の数は約100万人にも上る。この数字は市場における供給過多、つまり理学療法士の「大失業時代の到来」を予見する。30年後に失業する可能性があるならば、特に若い世代は生き残りをかけて、自らの「希少価値」を見出す努力をしなければならない。理学療法士が国家資格となった45年前は、理学療法士の存在そのものが希少価値だった。しかし今後は「何ができる」理学療法士なのか、自らの希少性を明確にする必要がある。理学療法士としての位置付けを細分化し、いま以上にスペシャリストであることを意識することが必要。
理学療法士の「二階級制度」は優秀人材確保の活路になる
理学療法士の5年間の教育制度を実現する前に、私たちは日本の「国民皆保険制度」に向き合わなければならない。多額の費用をかけずとも、ある一定水準の医療を受けられる。しかし裏を返せば、医療労働者の報酬が抑えられている。努力をしても、努力に見合った報酬が得られにくい状況下で、優秀な理学療法士を輩出しても、彼らは仕事に魅力を持ちづらく、モチベーションもあがらない。現在、この活路を開く有効な手段として考えられるのが、理学療法士の「二階級制度」。これは医師の補助として高度な医療行為を認める「特定看護師」と同様の考え方。一般の理学療法士と区分した「特定理学療法士」を導入し、質の高い治療を提供。たとえば、「特定理学療法士」を医師の包括的な指示を受け、理学療法士に具体的な治療の指示や、若い理学療法士の教育、管理などを行う高度な資格とします。その資格を有することで、その努力に見合う報酬と社会的地位を確保できるので理学療法士の二階級制度化は、いま医療政策で注目される救命医療と自立医療に大別する「二段階医療」にも大きく関与する。救命医療とは、
国民のすべての命を救うために国が保障するもので、実現には救命医療分野に医師と看護師を大量投入する。必然として自立医療分野の医師不足が起こるが、それをカバーできるのが、医師の包括的な指示をもとに、現場を動かせることができる特定理学療法士の存在だ。
ブログ筆者の考え
20年後の労働人口の減少から考えた理学療法士の供給過多による大失業時代はかなり切実な問題だ。職域の拡大として取り上げられた腰痛の軽減を図り離職率を下げるという例はあまり現実的ではないと思う。現に理学療法としての腰痛症に対する確立された治療法はなくエビデンスも低い。理学療法士の腰痛発生率が50%では説得力もない。効果のないものを効果的と謳うことは今までの業界の社会的存在価値を落としてきた経緯の二の舞を踏むことになる。
急性期リハビリテーションにおいては予防的介入は今後の軸となる領域と思われる。欧米では術前からの栄養・運動をセットにしたERASのような予防医学的介入が主流になりつつある。しかし、実践には各職種の枠を超えた専門スタッフやシームレスな連携が必要である。理学療法士がそのような場で活躍するには既存の教育だけでは不十分である。幅広い医学的専門知識と実践力やマネジメント能力が必要である。
特定理学療法士は制度上付加価値が認められる存在になれるのだろうか。例えば、吸引行為のように具体的に新たな医療行為を認めるような話なら別だが、いまの理学療法の枠内でどれだけ高度な知識をつけようとも付加価値や費用対効果が上がるとは考えにくい。今後、さらに厳しくなる医療経済状況を考えると、現実的に効果がないものに対し国は動かない。
昨今、〇〇療法士、〇〇療法の看板は現代急性期医療には通用しない。20年後必要とされる人材でいるためには、〇〇協会に頼るのではなく、職種の枠を超えた現実的な実践力やスキルを身に着けていなければならない。
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