journal of clinical rehabilitation vol.21 no.4
『特集 急性期病院における新しいリハの役割 課題の克服』 その①
今月(4月)の特集はブログ筆者の興味のある内容なのでシリーズで投稿してみたいと思う。
オーバービュー:
急性期医療におけるリハの必要性と問題点
影近 謙治 氏
金沢医科大学病院リハビリテーション医学科
はじめに
急性期リハは固定化しつつある障害に対して受け身に追いかける医療ではなく疾患の発症から積極的に介入し、起こり得る事態に的確に対応できる医療でなければならない。在院日数短縮が叫ばれるなか、それはリハを単に早く始めればよいという開始時期だけの問題ではない。急性期医療では救命や疾患の治療が優先されるが、その中でリハも疾患に対する医療と平行に行われるべきである。なぜなら、廃用症候群等の合併症を予防し、不用意な時間を費やすことなく、患者の退院後のQOLをも高める結果をもたらし、病院全体にメリットをもたらす医療だからである。
急性期リハの目的は、患者が早く高いレベルの状態に回復し、退院して社会復帰することである。在院日数の短縮や医療費の抑制はその結果である。大学病院や多くの急性期病院では、専門の科が集約的に治療に参加しているが、リハ科のリハ専門医もその一翼を担っている。急性期リハを推進するためには、まずは廃用症候群予防とそれの実行のための医療技術、さらにはその効果的な運用のためのシステムが必要になる。急性期には患者のバイタルも安定せず、リハの介入が困難な場合や禁忌の場合が多く、そのために主治医からの依頼が遅れたり忘れられたりするケースをよく経験する。その不安定な状況下でリハを実践するためには、リハ医の指示のもとにリハスタッフに対しては正確な状況判断、評価ができる知識と技術が求められる。
急性期医療におけるリハの現状と必要性
急性期医療におけるリハの意義は以前からその必要性は強調されてはいるものの、実際には生死を争う状況のなかで救命や疾患の治療が優先され、患者の今後の生活の質までは考慮されないのが現状である。しかし、早期のリハ介入により、より高い回復レベルで次の段階へバトンタッチができるように回復、改善させることが急性期医療におけるリハの役割りと言える。
急性期の現場では、まだ、リハの必要な潜在的疾患が多く存在する。一方、多くの急性期病院では、容易にリハスタッフを増員できないのが実情であろう。実際、リハは依頼される患者のみを受身的にこなしているケースが多く、早期リハの必要な患者であるのにリハが処方されないケースが回診等でよくみかける。少ない現状のリハスタッフの稼働でより多くの患者にリハが提供されるためには、リハの内容はもちろん、施行時間や頻度を疾患や病棟ごとに分類して、効率的に運用するマネジメントが必要になる。リハの質を上げることは、まさにリハの必要な患者に必要なだけのリハを提供できるということに他ならない。一般に急性期リハを開始するには3つの依頼経路がある。
まず、一般的に入院後直接主治医からの依頼によるもの。もうひとつは、入院時患者に対して行われるSGA(Subjective Global Assessment:主観的包括的評価)や、各科病棟回診、NST回診、緩和ケアチーム回診等のあとに、リハの必要性が討議されてから依頼されるケース(廃用症候群、嚥下障害、褥瘡患者の例)がある。…省略
急性期医療におけるリハの問題点
(1)リスク管理
急性期リハの普及により、ハイリスクな患者を対処にする機会が多くなった。しかも在院日数の短縮化により、リハスタッフがゆっくり時間をかけてそれに対処する余裕がなくなっている。急性期では疾患の不安定性からリハが介入できないケースが多く、またできても再発、心肺停止、誤嚥等厳格なリスク管理が必要で、安全なリハの継続を中止せざるを得ないケースがある。そのため毎日、主治医、看護師との連絡の中で患者の新しい情報を共有し、バイタルチェックを怠らず、リハが可能な状況かを把握することが必須である。
(2)合併症の問題
特に誤嚥性肺炎等の嚥下障害に始まる肺炎や摂食障害から起こる栄養状態の悪化はリハの介入後であっても機能低下をもたらす。
嚥下障害、栄養管理:NST、口腔ケアチーム、摂食嚥下、誤嚥性肺炎予防チーム等と連携し、リハスタッフが積極的に参加する必要がある。
廃用症候群:予防にまさる治療法はなく、各職種に廃用症候群の予防意識を高めるよう勧める。
(3)チーム医療とスタッフの連携
名ばかりのチーム医療では多くのスタッフがかかわるだけで権限や責任の所在が明確にならない。リハ医はチームリーダーとしてリードする義務がある。互いに他職種を十分理解、尊重しseamlessな医療を目指すべきである。
(4)回復期・維持期とのシームレスな連携
(5)患者家族への指導
(6)介護施設等の指導
変わりつつある急性期医療のなかでのリハの役割ー大学病院での試み
大学病院では、多くの専門職種によるチーム医療が可能であり、それがリハの強みである。
これまでリハチーム医療に関しての報告は、診療科、病床数の多い大学病院では少なく、回復期病院が中心であった。そこで2010年7月よりチーム医療の充実を図るため、リハ訓練室中心から病棟中心のリハに変更した。その結果として、在院日数、入院からリハ開始までの日数において効果がみられた。FIM効果、FIM効率では有意差を認めなかったが、端坐位獲得や回復期リハ病棟転科までの日数は短縮した。
在院日数短縮の要因として、リハ開始までの日数が有意に短縮を認めたことから、早期介入による廃用症候群の予防が一要因と考えられた。しかし、FIMに有意差がなかったことから運動機能面による改善効果よりも病棟での他職種との連携によるリハの充実が最大の要因と考えられた。
今後、患者の基本動作、ADL能力、自主練習共有シートの作成、高齢患者の臥床時間の短縮を図るための取り組みの強化、病棟回診への参加等を考えている。
急性期医療におけるリハの将来展望と課題
DPCによる入院期間の短縮により、ますます急性期リハにかける時間は制限される。その中で合併症を予防、克服してリハ時間を有効に当てはめるためには、効果のある治療法に対するリハスタッフの果敢なる探求が求められる。
リハ効率や患者の機能改善のみを重視するあまり、将来を見据えたゴール設定に基づくリハの遂行を忘れてはならない。
(1)廃用症候群に対する意識を高める
急性期リハの目的は、如何に廃用症候群の発症を抑え、効率的に患者の回復力を引き出すかにある。リハスタッフ以外の職種もときにはオーバーラップしてリハ的行為を行うことが効果的である。
(2)チーム医療の機動化
NSTや褥瘡委員会、呼吸ケアサポートなど一つにまとめ、全病院的な組織で個々の患者に対応できるような、Total care planningのできる組織作りが理想的である。また、リハ側から患者を拾い上げることが求められる。
(3)医療連携
おわりに
急性期病院での専門性の細分化が進む中で、患者背景も含めたトータルなリハチーム医療が要求される。それにはまず医療スタッフが互いにそれぞれの職種を理解、尊重することが大切であり、その結果seamlessなりは医療が可能になると思う。急性期リハの項か評価は、在院日数や診療収入の数字ではなく、むしろそのあとのimpairment(機能障害)やactivity(活動)レベルの改善、つまりQOLや社会復帰の内容による。つまりQOLを高めることは、我々リハ医療にかかわる者自身のQOLを高めることでもあると思う。
ブログ筆者の考え
急性期リハ医療の現状を非常によく解説していただいたと思う。リハスタッフを容易に増員できないこと、急性期リハが適応の潜在的な患者を拾い切れていない点等は私の施設でも同じである。そのなかでやはり、積極的な急性期リハやチーム医療へ参加することが急性期リハの発展の重要ポイントと示されている。しかし現実には積極的な急性期リハやチーム医療を推進していく場合、他職種を巻き込みながら協力を仰ぎ、病院全体に理解してもらう必要がある。また、大学病院や急性期総合病院は診療科ごとの縦割りが根強く、中小病院のようにアクションをすぐに理解してもらえない現状もある。本文中にも挙げられていたが、実際は名ばかりのチームで結果を出せていないケースも少なくない。
現在、チーム医療に対する制度において経験年数や認定資格が施設基準として規定されているものの、活動に対する報酬、つまりは費用対効果としてはまだまだ不十分な印象がある。やはり、現実的な急性期リハやチーム医療の推進には制度的な後押しも必要である。
また、急性期リハやチーム医療として目に見える結果を出すためにはマネジメントや実行力のあるキーパーソン的人材が不可欠である。例えば、病棟に看護師長が置かれているようにチーム医療におけるリーダー的ポジションを医師以外に位置づける必要があるのではないだろうか。
現在リハビリテーションにおける報酬制度や各加算は細分化された時間単位に対し報酬が与えられるため現実的な結果が伴わないことが多い。これからの制度設計として診療行為を細分化して報酬を充てることより、チーム医療への参加やマネジメントを導入した行程と結果に報酬を充てることに重点を置くことのほうが効果的ではないだろうか。また現実的な実行力やマネジメント能力のある人材に対し施設基準等の付加価値を手厚く与えるべきである。結果が伴わなければチーム医療の価値はない。このような現実的な切り口でシステムや制度設計を進めなければチーム医療や急性期リハの発展はない。
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