2012年8月7日火曜日

歩行が遅い高齢者では高血圧があっても死亡率上昇せず


日経メディカルオンラインより
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201207/526075.html

2012. 7. 30
高血圧死亡の関係は年齢が上昇するにつれて弱まることが示されている。米Oregon州立大学のMichelle C. Odden氏らは、6メートル歩行テストによって測定される歩行速度高齢者を層別化し、血圧と死亡の関係を調べた。その結果、歩行速度が速い高齢者では高血圧は死亡リスク上昇をもたらすが、歩行速度が遅い高齢者では死亡リスクの上昇は見られず、歩行を完了できないような虚弱な高齢者においては、高血圧が反対に死亡リスク低下に関係していることが明らかになった。論文は、Arch Intern Med誌電子版に2012年7月16日に掲載された。

 日常診療において接する様々な高齢者、特に身体機能に衰えが見える患者に対して、血圧の目標値をどこに設定すべきかは難しい問題だ。

 著者らは、高齢者においては、血圧上昇の健康への影響を考える際に重要なのは、年齢ではなく虚弱の程度ではないかと考えた。歩行速度は、健康状態の指標として、また、死亡その他の有害な転帰の予測因子として優れていることが近年示されている。そこで著者らは、高血圧の有害な影響がより大きい高齢者を同定するために、歩行速度の測定が役立つのではないかと考えた。さらに、血圧上昇は、歩行速度が速い、すなわち虚弱度が低い高齢者の死亡リスクに関係しているのではないかと仮定した。

 米国民を代表する人々を対象に行われた国民健康栄養調査(NHANES)の1999~2000年と01~02年の調査に参加した65歳以上の高齢者で、収縮期血圧の測定値が記録されていた2340人を分析対象とした。これらの人々の06年12月31日までの死亡に関するデータを、National Death Indexから得た。

 歩行速度は20フィート(6メートル)歩行テストを実施して測定されていた。被験者には通常の速度で歩くよう指示し、結果に基づいて「速い」(0.8m/s以上、1307人、全体の56%)、「遅い」(0.8m/s 未満、790人、34%)、「完了できず」(243人、10%)に分類した。

 交絡因子として、年齢、性別、人種、学歴、喫煙歴、飲酒習慣、身長、体重、総コレステロール値、HDL-C値、トリグリセリド値、シスタチンC値、推算糸球体濾過量(eGFR)、身体活動量、糖尿病歴、冠疾患歴、脳卒中歴、心不全歴、降圧薬の使用などについてベースラインで調べて記録した。

 歩行速度が「速い」グループは、「遅い」グループの患者に比べ若く、女性と黒人は少なく、喫煙者は多く、BMIは低かった。併存疾患保有率は低く、降圧薬使用頻度は低かった。収縮期血圧が最も高かったのは、歩行を完了できなかったグループだった。全体では約半数に相当する1164人の収縮期血圧が140mmHg超だったが、拡張期血圧が90mmHg超の患者は6%(133人)に留まった。

 06年12月31日までに589人が死亡していた。死亡率は1000人-年当たり41.7だった。血圧と死亡の関係は、歩行速度によって異なっていた。

 歩行速度が「速い」グループでは、収縮期血圧が140mmHg以上の人々の死亡率は1000人-年当たり28.1、140mmHg未満の人々では20.4で、差は7.7となった。140mmHg未満を参照群として140mmHg以上の高齢者の死亡のハザード比を交絡因子で調整して求めると、1.35(95%信頼区間1.03-1.77)になった。

 同様に、拡張期血圧についても検討したところ、90mmHg以上群の死亡率は24.0、90mmHg未満群では23.5。死亡の調整ハザード比は0.94(0.38-2.28)と、有意差を示さなかった。

 一方、歩行速度が「遅い」グループでは、収縮期血圧、拡張期血圧のいずれも死亡リスクと関係していなかった。収縮期血圧140mmHg以上群の死亡率は1000人-年当たり72.1 140mmHg未満群では67.6で、差は4.5、死亡の調整ハザード比は1.12(0.87-1.45)。拡張期血圧では、90mmHg以上群の死亡率が42.5、90mmHg未満群では71.3で、差は-28.8、調整ハザード比は0.75(0.32-1.75)だった。

 歩行を完了できなかったグループでは、収縮期血圧140mmHg以上群の死亡率は1000人-年当たり62.4、140mmHg未満群では133.5で、差は-71.1。死亡の調整ハザード比は0.38(0.23-0.62)で、血圧が高い群で有意な死亡リスク低下が見られた。拡張期血圧については、90mmHg以上群の死亡率は8.45、90mmHg未満群の死亡率は95.6で、差は-87.2。死亡の調整ハザード比は0.10(0.01-0.81)と、やはり血圧が高い群の死亡リスクが有意に低かった。

 米国民を代表する65歳以上の高齢者を対象とした今回の研究で、歩行速度が速いと収縮期血圧高値は死亡リスク上昇に関係するが、歩行速度が遅い高齢者では、血圧と死亡リスクの間の関係は弱まることが明らかになった。歩行を完了できなかった虚弱な高齢者では、反対に、収縮期血圧高値と拡張期血圧高値は死亡リスクの有意な低下と関係していた。歩行速度は、高血圧が有害な転帰をもたらすリスクが高い高齢者を同定するためのシンプルな指標であることが示された。

 原題は「Rethinking the Association of High Blood Pressure With Mortality in Elderly Adults: The Impact of Frailty」、全文が、Arch Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。

0 件のコメント:

コメントを投稿